64bit Anaconda に cvxopt をインストールする

Posted: 2016-02-26, Modified: 2017-05-17 Python Windows Anaconda cvxopt Qiita

本稿は Qiita 投稿記事のバックアップです．

概要

Windowsで 64bit版の Anaconda に cvxopt をインストールしようと思ったら非常に苦労したので作業内容をまとめる．

cvxopt のドキュメントには Windows へのインストール方法が書かれている．しかし，32bit 版の Python を想定しているらしく，ドキュメント通りにすんなりとインストールは出来ないので注意．本稿は，このドキュメントに沿って変更すべき点をまとめる．

想定環境

Windows 10 (64bit)
Anaconda for 64bit Windows (Python2.7)
MinGW (64bit)

これらは既にインストールされているものとする．

なお，以降の作業は専用のディレクトリを作って，その中で行うものとする．例として D:\glpk 内で行う場合は，次のようにすればコマンドプロンプトを開くことができる．

依存ライブラリの準備

これはドキュメント通りで良い．

BLAS

BLAS のソースファイルをダウンロードする．そして，コマンドプロンプトから次のコマンドを実行する．

$ tar -xvf blas.tgz
$ cd BLAS-3.5.0
$ sed 's/_LINUX/_WIN/' make.inc -i
$ make && cp blas_WIN.a ../libblas.a
$ cd ..

ただし，2行目のディレクトリ名は取得した BLAS ソースファイルのバージョンによって変わるので適宜読み替える．

LAPACK

LAPACK のソースファイルをダウンロードする．そして，コマンドプロンプトから次のコマンドを実行する．

$ tar -xvf lapack-3.5.0.tgz
$ cd lapack-3.5.0
$ cp make.inc.example make.inc
$ make lapacklib && cp liblapack.a ..
$ cd ..

もし，libquadmath-0.dll が無いと言われたら，ここからダウンロードして MinGW/bin(デフォルトだと C:\MinGW\bin だと思われる) に置いてから上記コマンドを実行する．

CVXOPT のコンパイル

ここからが本番．CVXOPT のソースファイルをダウンロードする．そして，コマンドプロンプトから次のコマンドを実行する．ファイル名やフォルダ名はバージョンによって変わるので適宜読み替える．

$ tar -xvf cvxopt-1.1.8.tar.gz
$ cd cvxopt-1.1.8/src

setup.py を開いて，

12行目あたりにある BLAS_LIB 変数の初期化を BLAS_LIB = ['blas','gfortran'] に変更
9行目あたりにある BLAS_LIB_DIR 変数の初期化を BLAS_LIB_DIR = '.' に変更

次に，distutils パッケージの cygwinccompiler モジュールを編集する．Anaconda が c:\Anaconda にある場合，c:\Anaconda\Lib\distutils\cygwinccompiler.py を開く．もし，このファイルに -mno-cygwin という文字列があればすべて削除する．(手元の環境では無かった)

libpython27.a と libmsvcr90.a の作成

後の処理で必要な，Linux の静的ライブラリ libpython27.a と libmsvcr90.a が，デフォルトでは用意されていないので Windows 用のライブラリから変換する．

まず，変換用のツールをインストールする．

$ mingw-get install pexports

次に，Anaconda ディレクトリ（例えば c:\Anaconda）にある python27.dll と msvcr90.dll を cvxopt の setup.py があるディレクトリにコピーする．

libpython27.a の作成は次のコマンドを実行すれば良い．

$ pexports python27.dll > python27.def
$ dlltool --dllname python27.dll --def python27.def --output-lib libpython27.a

libmsvcr90.a の作成はもう少し複雑である．まず，

$ pexports msvcr90.dll > msvcr90.def

を実行し，できた msvcr90.def をテキストエディタで開く．そして，304〜314行目付近にある，

_decode_pointer という行を ;_decode_pointer に
_encode_pointer という行を ;_encode_pointer に

修正する．その後，

dlltool --dllname msvcr90.dll --def msvcr90.def --output-lib libmsvcr90.a

を実行する．出来上がった libpython27.a と libmsvcr90.a は，Anaconda の libs フォルダにもコピーしておく．その際，もし libs ディレクトリに python27.lib があれば python27.lib_ に変更しておく．

ソースコードの修正

オリジナルのソースコードのままではエラーが出るので，次のファイルを修正する必要がある．

src/C/cholmod.c

31行目付近の

/* defined in pyconfig.h */
#if (SIZEOF_INT < SIZEOF_LONG)
#define CHOL(name) cholmod_l_ ## name
#else
#define CHOL(name) cholmod_ ## name
#endif

を

/* defined in pyconfig.h */
// #if (SIZEOF_INT < SIZEOF_LONG)
#define CHOL(name) cholmod_l_ ## name
// #else
// #define CHOL(name) cholmod_ ## name
// #endif

に修正．

src/C/SuiteSparse/SuiteSparse_config/SuiteSparse_config.h

155行目付近にある下記のコードを削除する．

#ifndef NTIMER
#ifdef _POSIX_C_SOURCE
#if    _POSIX_C_SOURCE >= 199309L
#define SUITESPARSE_TIMER_ENABLED
#endif
#endif
#endif

src/C/amd.c

27行目付近にある，

#if (SIZEOF_INT < SIZEOF_LONG)
#define amd_order amd_l_order
#define amd_defaults amd_l_defaults
#endif

を

//#if (SIZEOF_INT < SIZEOF_LONG)
#define amd_order amd_l_order
#define amd_defaults amd_l_defaults
//#endif

に修正．

コンパイルとインストール

ここまでして，ようやく次のコマンドでコンパイルできる．

$ python setup.py build --compiler=mingw32

インストールするためには，Anaconda の Lib/distutils に distutils.cfg を作成し次の内容を記入する．

[build]
compiler=mingw32

その後，インストールする．

$ python setup.py install